パスワードマネジャーとして長年使っている「1Password」。
現在のバージョン8になったときに仕組みが大きく変わっている。

要は「サブスクリプション」で使うようになったのだ。

これまでは買い切り版(スタンドアロン)の1Password 7をMacとiPhoneにインストールし、パスワード管理に使ってきた。それで何も問題はなく快適だったので、バージョン8への移行はしてこなかった。だが、ここにきて移行せざるをえないのか?という事態になっている。

【最近の状況を追記】

旧バージョンのブラウザ拡張機能がサポート切れに

1Password 7とバージョン8では仕組みが異なっているため、ブラウザでパスワードを管理するための拡張機能も別々になっている。1Password 7で使ってきた拡張機能は「Classic Extension」と呼ぶようだ。こちらが2023年7月からサポート対象外になるという。

On July 10, 2023, the 1Password classic extension for Chrome, Firefox, Edge, and Brave will no longer be supported.

The 1Password classic extension will stop working in July 2023

しばらく前から、Webブラウザで1Passwordを使う際にもメッセージが表示されるようになった。7月10日をもって、Chrome・Firefox・Edge・Braveの各ブラウザでは、旧来の1Passwordの拡張機能がサポートされなくなる。

今後も1Passwordをブラウザから使うためには、バージョン8への移行が必要だという。

  • 1Passwordをバージョン8にアップデートする
  • 新しいバージョンのブラウザ拡張機能をインストールする
  • これまで使ってきたバージョン7用の拡張機能を削除する

しかしこの説明にはSafariの記載がないため、Safariでは現状のまま使えるようだ。

1Password 7と8の違い

1Password 8がリリースされてだいぶ経つのも事実だが、あらためてバージョン7との違いを整理しておきたい。けっこうややこしいのだ。

冒頭にも書いたように、1Password 7は買い切り版として使うことができたが、現行の1Password 8はサブスクリプションでしか使えないのが最大の違い。1Passwordアカウントというメンバーシップに登録して使うことになる。バージョン7でもアカウント登録自体はあったが、メンバー登録せずとも使うことができた。現行バージョンでは、この買い切りモードはなくなり、サブスク制度(1Passwordアカウント)に一本化されている。MacやiOSのアプリもバージョン7と8で別になっている。

保管庫を移行する必要がある

1Passwordではパスワードやクレジットカード情報などを「保管庫」にいれて管理している。バージョン7までの「スタンドアロンの保管庫」は、1Passwordアカウントに移行しないといけない。

1Password 7 and earlier supported standalone vaults, which stored information locally on your device outside of a 1Password account. 1Password 8 requires a 1Password membership. If you see a Primary vault in the 1Password app, follow the instructions below to sign up for an account and migrate your information.

Migrate your existing 1Password data from standalone vaults to a 1Password account
名前が「プライマリ」となっていたら従来のスタンドアロン保管庫

従来はスタンドアロン保管庫をiCloudやDropboxを使ってデバイス間で同期していた。バージョン8からは、この保管庫を1Password.comに移して使うことになる。

移行しないと使えなくなるのか?

1Password.comのメンバーシップは月額3ドル/450円。年間プランだと3900円のようだ(App Storeで表示されている金額)。1Password 7のアプリからは3年間半額というオファーがでている。ソースネクストは3年版を7800円で販売している。

さて、FirefoxやChromeのブラウザ機能拡張は、このまま新バージョンに移行しないと7月以降は使えなくなってしまうのだろうか。ひとまず様子見だが…。

追記:2023年7月以降の状況

2023年7月31日の時点でFirefoxやChromeのブラウザ機能拡張はまだ動作している。
(保存済みパスワードの自動入力や、ブラウザからの新規パスワード保存など)
もう少し様子見だ。その後、2023年11月上旬でもまだ動作している。1Password 7のアプリ自体も大きなバグはなく動作している。(macOS 13、iOS 17ともに)

公式サイトの記載が更新され、サポート終了となったことが明記されている。ちなみにClassic Extensionが最後にアップデートされたのは2019年だ。

The 1Password classic extension is no longer supported by 1Password, and may stop working in modern versions of Chrome, Firefox, Edge, and Brave.

The 1Password classic extension may no longer work in your browser

バージョン8に移行するメリットは?

バージョン7を使っているユーザーで、現在特に困っていることがないのであれば、バージョン8に移行せずともなんとかなりそうだ。ただし、今後iOSやmacOSがアップデートしていったときに、どうなるかはわからない。

1Password自体はパスワードマネジャーとして歴史あるアプリで、信頼性もあると言っていいだろう。サブスクモデルのほうが安定的に資金を確保できるという点も理解できる。

とはいえ、バージョン7でも十分に動作しているので、サブスクに移行するメリットが見出せなかった、というのがこれまでのところだ。バージョン8がリリースされたばかりの頃は、macOSネイティブではなく「Electron」フレームワークを採用したことも評判が良くなかった。

バージョン8になっての注目点のひとつは「Passkeys」への対応だろうか。今後使用が広がっていくとみられるパスワードレス認証に、1Passwordも対応していることをアピールしている。

アップルがパスワード管理機能をアップデート どちらを使う?

Appleは2024年秋のOSアップデートで、新しいパスワードアプリを導入することを発表している。iOS 18をはじめ、iPadやMacに加えてApple Vision ProやWindowsでも使えるようになるという。新たに1Password 8のサブスクを購入するかは、この新しいアプリを試してみてからでもよいだろう。OS標準のパスワード管理機能よりも1Passwordに付加価値があると感じられるかどうか、悩むことになりそうだ。